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『ふしぎの森のおんがくたい』ができるまで [ボードゲーム]

■2011年6月 アイデアの湧出
『ふしぎの森のおんがくたい』を作る一番最初のきっかけは、音楽教室の先生から「音楽をテーマにしたゲームって作れませんか?」と相談されたことでした。
幼児向け音楽教室の先生からの依頼なので、対象は4歳から6歳くらいです。自分の上の子どもが3歳だったので、自分の子どもが遊べるようなゲームを作ろうと思い、創作を開始しました。
子ども向けゲームというと制限がいくつか出てきます。簡単に思いつくものだけでも、複雑な計算は難しい、できるだけ数字や文字は入れない、子どもが好きそうなテーマが必要、手が小さいから手札をたくさん持つことができない、非公開情報は少ない方がアドバイスしやすくてゲームを進めやすいなどです。
で、思いついたのがドレミファソラシの音階カードを『神経衰弱』の要領で取っていき、とったカードを自分の目の前に並べていくゲームです。とったカードがドレミファとつながれば獲得成功。つながらなければ場に戻すというものです。
それ以外にも、8分音符、4分音符、2分音符、全音符という種類のカードがあって、ちょうど一小節になるように手札からカードを出していくゲーム、音階を並べて七並べのようにするゲームなど、いろいろと考えました。

■2011年8月 ゲームのイメージ化
僕がゲームを作るときに大事にしているのが「ゲームをしている光景が思い浮かぶこと」です。
このゲームを考えているときに「カードに両手を広げた音符の精霊(小人さんみたいな存在)を描き、音階を並べると精霊が手をつないでいるようなイメージ」が脳内に展開されました。
「これは面白そうだし、子どもたちも喜ぶに違いない。このイメージでゲームを作っていこう」と、このゲームを本格的に開発していくことを決めました。この頃の試作品には小人の代わりにミープルをイメージしたイラストを描いていました。
イメージが固まったので『Tunnels&Tricks』でお世話になった長谷川登鯉さんにアートワークについて相談しました。すると「ゲームのオムニバスというのは面白いですが、核となるゲームが必要だと思いますよ。」というアドバイスをいただきました。このアドバイスがこのゲームの方向性を大きく変えることになりました。

■2011年9月~11月 熟成期間
熟成期間といえば聞こえがいいですが、2011年秋のゲームマーケット準備のために『ふしぎの森のおんがくたい』の作業はストップしてました。
この頃は『コリントコンストラクション』というスマートボール台を使ったゲームボードビルド系ゲームの製作に取り組んでいました。『コリントコンストラクション』はいずれKickstarterか何かで資金集めをして製品化したいです。

■2011年12月 再始動
核となるゲームを考えたときに、自分が好きなゲームである『アクワイア』のようなゲームを作ろうと思い立ちました。
つまり、7つのホテルの代わりに7つの音階をあてはめ、それぞれの音階で筆頭株主を狙うようなゲームです。
手札から場にカードを出したら、場に出ている任意のカードの上にミープルを置いていき、ある条件がそろったら自分の色のミープルを一番置いている人がその列のカードを獲得するというルールでテストプレイを行いました。
カードを出した後にミープルも出すという処理が煩雑だったり、ポイントを計算するためにコインが必要だったりと、処理もコンポーネントも洗練されていませんでした。

■2012年1月 コンポーネントの圧縮
ミープルを使わないでどうやって決算を発生させようとあれこれ考えているうちに、『ミッキー&フレンズ 5リンクス』のよう規定枚数がそろったら決算を発生させようと思いつきました。
そして、決算を起こしたプレイヤーから1枚ずつとっていくという手順にすれば、ミープルを使わずに『アクワイア』のような筆頭株主を競い合うゲームができるに違いない。
これがゲームの骨格となりました。

■2012年2月 リアルを取るかゲームバランスを取るか
このころの試作品では、音符の拍数に応じて、4分音符が1の強さ、2分音符が2の強さ、全音符が4の強さを持っていました。しかし、1、2、4という数値のバランスでは4が突出しており、4を取れば勝てるという状況になることがテストプレイで多く発生しました。全音符の強さを3に調整すれば、ゲームバランスがとれることはわかっています。でも、音符の拍数と強さの結びつきを考えて、全音符を4の強さのままにしたかったのです。
悩みに悩みましたが、プレイヤーは音楽の勉強をしているのではなく、ゲームをしているのだという基本に則り、ゲームバランスを重視する調整を行いました。それまでは『音符であそぼ』という名前でゲームを考えていたのですが、『不思議な森の音楽隊』という名前にすることに決めました。

■2012年3月~4月 低調期
テストプレイを繰り返し、ゲーム的には煮詰まってきました。
ゲームとしては成立しているけど、なんか面白さが足りない。
そんなムードが漂ってきました。
こんなゲームなら出さない方がいいかも。そんな弱気になった時期でした。

■2012年5月 試作品の頒布
テストプレイ不足を埋めるため、試作品を多数作成し、twitterで応募してくださった方に広く意見を伺おうということにしました。
2週間ほどでいろいろと案が出てきました。
特殊カード(リバース、ショット)を作るべきだ、パスは任意にすべきだ、パスしたときにカードを全交換するのはどうか、残った手札で役をつくるのはどうだ、あのルールは蛇足だ、もっと選択肢を増やしてほしい、場のコントロールがもっとできるようにしたいなどなどです。
いろいろいただいた意見の中で光り輝いていた意見が、かゆかゆさんからいただいた「カードの獲得は反時計回りはどうでしょう」というものでした。手番プレイヤーが誰だったか忘れやすいだろうという配慮から、カードを出すのもカードを獲得するのも時計回りにしていたのですが、スタートプレイヤーマーカーを用意するだけで、カードの獲得は反時計回りにすることができました。こうして段々納得のいくゲームができてきました。
また、この頃は様々な勝利点獲得方式を考えており、音階ごとに勝利点獲得方法が異なる案も考えていました。その中で「プレイヤーが獲得したカード枚数分勝利点を得る」というものがありました。それを発展させることで今の勝利点獲得方式が出来上がり、チップ等のコンポーネントも省略することができました。

■2012年6月 ダミーカードの作成
萬印堂さんの試作品キャンペーンを利用するため、長谷川さんに試作品をお願いしたところ、想像以上にクオリティの高いものが上がってきました。
各音階の小人の顔と楽器がみんな同じなだけで、ほぼ現在とおなじデザインです。
そして、長谷川さんの「ひらがなの方がかわいいから」という意見から、ゲームの名前が『ふしぎの森のおんがくたい』と決まり、ロゴも作っていただきました。
萬印堂さんには試作品を作っていただいたのですが、コストと納期の折り合いがつかず製品版は作っていただきませんでした。萬印堂さんにはこの場を借りてお詫びいたします。

■2012年7月 お通夜
テストプレイを行って、何と言っていいかわからず場がシーンとなることをお通夜と言います(カナイさん命名)。
1位と2位が点数をとれるようにする、パスは任意にできるようにするとバランス調整したら完全に裏目。まったく面白くないゲームになってしまいました。
ほんのちょっとのルール変更でゲームが壊れてしまいました。このテストプレイにお付き合いいただいた方にお詫びいたします。

■2012年8月 横浜R&Rテストプレイ会
このゲームのルールは簡単なのですが、他プレイヤーが取ったカードも確認する必要があるため、いろいろなところを確認しながらプレイする必要があります。
考えどころの多さからゲーマーズゲームと呼ばれるようになりました。そこで何らか要素を削り、プレイ時間を短縮させることを考えました。
削った要素はカードの出し方です。出すときには悩まず、基本的には「出せるときに出す」という方針でバランス調整しました。こうすることでカードを獲得するときに悩むという方向性を明確にできると思ったからです。
テストプレイ会でもあれこれと意見が出ました。テストプレイ会のいいところは「考えてもわからないから、じゃあその案でやってみましょう」と直ぐに試すことができるところです。
こうして手札は常に3枚というルールが生まれ、ゲームシステムとしては完成しました。

■2012年9月 修羅場
アートワーク担当の長谷川さんがオーバーワークに陥りました。
長谷川さんが『あやつりキングダム』『ドラゴンズストーン』『ふしぎの森のおんがくたい』の3作品のアートワークに携わることになってしまったから、もう大変。
長谷川さんが他のゲームの作業をしている間に、私がカードの印刷所(ポプルス)、箱の印刷所(パッケージハウス)、マニュアルの印刷所(アルプス印刷)と調整を行い、長谷川さんからの入稿を待ちました。

■2012年10月 入稿
ゲームに登場する7人の演奏家を、7人とも全く違うキャラクターにする(「かいじゅうたちのいるところ」に出てくるかいじゅうをイメージ)案もありましたが、はせがわさんの進捗状況を踏まえ、7人とも違うキャラクターにする案はなしになりました。
しっかりしたダミーカードを作っていただいたおかげで『ふしぎの森のおんがくたい』の仕上げ作業は比較的少なくて済みました。
それでも楽器を描き分けたり、小人の顔を一人一人変えたりと、入稿直前まで長谷川さんの作業は続きました。
そして箱の原稿は10月30日、カードの原稿は10月31日、マニュアルの原稿は11月8日に入稿できました。

■2012年11月 ゲームマーケット本番
11月15日にすべての印刷物が納品され、ゲームマーケットに臨むことができました。
そして11月18日、ゲームマーケット2012秋本番。
多くの方にご購入いただき、持ち込んだ100部はすべて完売いたしました。ありがとうございました。
午前中にほとんど売り切ってしまい、買いたかったのに買えなかった方にはご迷惑をおかけしました。
現在は「テンデイズゲームズ」さんで扱っていただいておりますので、ぜひご利用ください。
http://shop.tendays.jp/70_667.html

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